丹波篠山が舞台となった映画「森の学校」【聖地巡礼】原作「少年動物誌」の世界
目次
映画「森の学校」とは
映画『森の学校』は、丹波篠山市出身で、霊長類学の世界的権威・河合 雅雄(かわい まさを)先生の『少年動物誌』(福音館書店 刊)を原作として製作されました。※野間児童文芸賞推薦作品賞受賞
少年動物誌 (福音館書店 刊)
この作品の映画監督である、西垣吉春さんも、丹波篠山市のご出身です。
映画「森の学校」は、丹波篠山の雄大な自然や景色を小さな画面で見てほしくないという監督の思いから、DVD化や動画配信されず、映画館のみでの上映となっており、ファンの中では「幻の映画」と呼ばれています。
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子どもの遊び場であり、学びの場である、森(自然)を取り戻そう
主演は、神崎愛さん(母親役)と篠田三郎さん(父親役)。
そのおふたりに愛情をもって育てられる息子、雅雄役を、三浦春馬さん(当時12歳)が熱演されています。
そして、多くの生き物(昆虫や動物など)も出演します。
この生き物たちとの触れ合いや、生き物の生と死から、自然との共存や命の尊さを学びます。
高度な文明生活の今、人は病院で生まれ、病院で死ぬ。子どもたちが生や死に触れることが少なくなってしまいました。
知識は机の上で学べるが、知恵は部屋の中では生まれない。TVゲームでは、命の尊さは判らない。
この映画は、 野山を駆け回り、川や田んぼで泥だらけになりながら遊ぶ中で、自然の美しさや命の大切さを学んでいく子どもの成長が描かれています。
また、親子の愛情表現や、近隣の方々との交流など、今の社会の課題を考えさせられる内容となっています。
河合雅雄さんが育った環境
現在は【丹波篠山市】と呼ばれますが、当時は、【兵庫県多紀郡篠山町】と呼ばれる地で成長された河合先生。
歯科医のお父様と、音楽を愛するお母様のもと、男ばかりの兄弟の三男として育てられました。
幼いころは、喧嘩が強く、近所の子とつるんではヤンチャをし、また、「昆虫博士」と呼ばれるほど、昆虫や動物が大好きだったようです。しかし、病気のため何度も学校を休み、勉強についていけなくなることも。そんな困難を乗り越えることができたのは「丹波篠山の自然とのふれあいをたくさん持てたことが原動力」だったようです。
京都大学へ進学され、その後、半世紀以上にわたってサルを研究。
モンキー博士として知られるサル学の世界的権威で、京都大学霊長類研究所所長、日本モンキーセンター所長などを歴任されました。
現在は、京都大学名誉教授、丹波の森公苑名誉公苑長、兵庫県立人と自然の博物館名誉館長、兵庫県森林動物研究センター名誉所長として活躍されています。
河合家の子ども達が野山を駆け回った昭和10年代。映画は平成13年に撮影されたものですが、それを感じさせない程、丹波篠山にはあの頃と変わらない景色が今もたくさん残っています。
「河合兄弟」「森の学校」ゆかりの地【1.18更新】
※現地を訪問される際は近隣住民の皆様のご迷惑にならないようマナーを守って訪問されてください。
ご注意・ご協力をよろしくお願いいたします。
篠山城跡
1609年に徳川家康が、大坂の豊臣氏をはじめとする西国諸大名のおさえとするため、15か国20の大名の助役を動員し、わずか6ヶ月で築城した城です。
実際に、河合兄弟が通学していた篠山小学校(映画撮影には使われていません)は、この篠山城のお堀の中にあるという、大変珍しく歴史のある小学校です。
いつの時代も、市民の憩いの場・遊びの場として親しまれています。
映画の中では、石垣に登り、ゴリラ(島木譲二さん)に怒られたり、青山神社の掃除をしているゴリラの目を盗み、スモモを取るシーンなど、何度も登場しています。
河原町妻入商家群(鳳凰会館)
伝統的建造物群保存地区。京街道に沿って商家を中心とした地区で、江戸時代からの佇まいを残しています。
この地区の中にある鳳凰会館は、映画の中で、河合家が営む歯科として映し出されました。
すでに舗装されている道路を、昭和の時代を再現するため、砂をまいて撮影。撮影後の、砂の回収が大変だったと、西垣監督は振り返ります。
河合家の家の中の様子は、映画の撮影所で撮影されたそうです。
春日神社の秋祭り
篠山城址(当時は『笹山』という丘)から、篠山城が築城される時に現在の場所へ遷されました。
能楽愛好家であった篠山藩の13代藩主、青山忠良によって江戸時代末期に建てられた能舞台は、建築当時、当時箱根以西において最も立派なものであると称えられました。平成15年、国の重要文化財に指定。
現在でも、1月1日には「翁奉納」4月上旬に「篠山春日能」が催されています。
10月の第3土日には、祭礼が行われ、神幸の渡御行列や鉾山の巡行、太鼓みこしの巡行が今も残っています。子どもは鉾山にのり、大人はみこしを担ぎます。
女性たちはあわただしく、祭の食事などの準備をするシーンが映画にも映し出されていました。
海から遠い丹波篠山では、福井県の若狭から運ばれてきた塩鯖と収穫したての丹波篠山の米で作る『鯖寿司』や『箱寿司』は、今も秋祭りに欠かせないごちそうとなっています。
祭の夜は、参道に多くの屋台が立ち並びます。
映画の中では、マト(三浦春馬さん)とミト(小谷力さん)が、能舞台に登ってふざけているところを怒られたり、ハムスターを香具師(福本清三さん)から買うシーンで映し出されました。
丹波焼(立杭)登り窯
丹波焼は、丹波篠山市今田町の立杭という場所で育まれてきた、日本独自の焼き物です。
日本遺産の「日本六古窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)」に登録されています。
昔は、「立杭焼」や「丹波立杭焼」などと呼ばれていましたが、2014年に「丹波焼」という呼び名に統一されました。
丹波焼の窯元は、「登り窯」という、山の傾斜を利用して作られた窯を持っています。
「日本最古の登窯」は47mもの大きさを誇り、今でも年に一度、三日三晩かけて作品を焼成します。
映画の中では、ヒロイン役の美代子(小峰玲奈さん)の祖父(織本順吉さん)が、登り窯の焼成をしていました。この撮影のサポートをされたのは、「千代市陶房」の清水千代市さん。
清水千代市さんは、西垣監督のご友人ということもあり、登り窯の撮影シーンを終始サポートされています。撮影用の登り窯の手配(現在は撮影に使われた登り窯は残っていません)、薪を燃やし、登り窯を覗くシーンなど、当時の撮影の様子を、タイミングがよければ詳しく教えてくれます。
千代市陶房:丹波篠山市今田町上立杭5 079-597-2288
営業時間:10:00〜17:00 定休日:不定休
丹波篠山市大山宮(旧園田家)
篠山藩の頃(1860年頃)には、藩内随一の大高持となった記録のある、庄屋「園田家」の屋敷。
現在は「mocca」という複合商業施設にリノベーションされております。
敷地面積1000坪の中には、「木のある暮らし」をテーマにしたカフェや、木工クラフト工房、コワーキングスペース、宿泊スペースなどが設けられ、木の香りと温もりに包まれながらゆったりとした癒しの空間を楽しめます。
建物は出来る限り古いものを残しつつも、そこで使用する家具や什器は、さまざまな木材で自作されており、それらを見るのも楽しみのひとつ。
又、木を使ったワークショップでは沢山の出逢いがあり、新しい発見や気づきが生まれる機会。
新たな自分が発見出来るかも。
映画では、河合家のおばあちゃん(雪代敬子さん)の家として登場しました。
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波々伯部(ほうかべ)神社
「丹波の祇園さん」と呼ばれる神社。青銅の鳥居は、日本最古のものと言われています。
境内には4本の杉の巨木、参道にはケヤキが両側に並んでいます。
映画では、ガキ大将の座を上級生のセイヤン(向田祐介さん)から譲り受けるシーンなどで映し出されました。
弁天橋下の沈下橋
学校を休んでいた雅雄が、上田先生(みや なおこさん)と話すシーンや、台風のあとお父さん(篠田三郎さん)と魚たちの心配をするシーンで映し出されました。
お立ち寄りの際は、厳島神社(丹波篠山市野間419)へ駐車していただき、河川の流れにはご注意下さい。
盃ヶ岳
ハンミョウを捕まえ、「ここを動物園にする」と、雅雄(三浦春馬さん)が美代子に伝えた場所。
丹波篠山市曽地中(桜の木)
パンフレットや、映画の絵のモチーフとなっている木
弓月神社
激しい雷雨が来て、雨宿りした神社。
その日を境に、美代子(小峰玲奈さん)を含め、子どもたちが打ち解けあう。
小林家長屋門
篠山藩主 青山忠祐が、老女 小林千衛のために改築した長屋門。江戸時代後期に建てられた丹波篠山市内に残る、数少ない武家長屋建築の1つとして貴重なことから、兵庫県指定文化財に指定されています。
バスから降りてきた美代子と美代子の母親(日向明子さん)が、祖父(織本順吉さん)の家に向かっているところを、子どもたちが後ろから追いかけるシーン
郡家(グンゲ)の憲兵隊
丹波篠山市郡家という地域には、明治41年頃から終戦までの約40年間「歩兵第70連隊」と呼ばれる、大日本帝国陸軍の連隊が設置されていました。
盃ヶ岳・多紀連山などの裏山を演習場代わりにした苛烈な訓練で知られており、「丹波の鬼」と称され、全国にその名をとどろかせていました。
彼らの銃の訓練で捕獲したイノシシの肉を、みそ汁に入れて食べるようになり、「丹波篠山の猪肉は最高だ」と、全国に丹波篠山のぼたん鍋が知れ渡ったと言われています。
鐘ヶ坂不動滝(丹波市)
この滝の前で、おばあちゃんからもらったキャラメルを食べる。
子どもと一緒に訪れたい!森のおすすめスポット
住所:兵庫県丹波篠山市小田中572
営業時間:10:00~17:00
定休日備考:4月〜11月の平日(夏休み除く)、冬期(12月〜翌年3月)
平日(4月〜11月)は、予約受付をして団体利用のみ開館します
参考サイト
・丹波新聞記事「ジンクス破った三浦春馬さん 監督が語る天性の才 子役時代の映画再上映へ」
・神戸新聞記事「三浦春馬さん子役時代の熱演映画に脚光 2千人のオーディションから選出「素質感じた」
・朝日新聞記事「子役の三浦春馬さんに「光っているね」才能見抜いた監督」(有料記事)
・「森の学校」製作風景(動画)
・ぶらり丹波路(フォトギャラリー旅丹)(丹波地域のフリー画像)
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